花梅は、日本に400種類以上もあるとされます。花梅は大きく分けて、「野梅系」「緋梅系」「豊後系」の3種類の系統があり、花の色や木の状態によって、その3系統は、さらに8つの性(しょう)に分類されます。
ここでは、「野梅系」「緋梅系」「豊後系」3つの系統に属する花梅の特徴や、それぞれに属する花梅の名称について解説します。
野梅系の品種の特徴
「野梅系」に属する梅は原種に近く、枝は細くて花も葉も比較的小さいのが特徴です。「野梅系」には4つの性(しょう)「野梅性」「紅筆性」「難波性」「青軸性」があり、花梅の数も豊富です。
「野梅性(やばいしょう)」に属する花梅は、原種に近い物が多くあり、枝が細くトゲ状の小枝を出すこともあります。葉っぱは比較的小ぶりで無毛です。花は白または淡紅が多くよい香りがします。若い枝は緑色をしており、日に焼けると赤みを帯びてきます。
「紅筆性(べにふでしょう)」の花梅は、紅色のつぼみの先が尖っているために紅筆と呼ばれます。
「難波性(なにわしょう)」の花梅は、枝が細く茂りがちで、こぢんまりする傾向があります。挿し木でよく活着するものが多いです。葉の形状は丸型に近いです。
「青軸性(あおじくしょう)」の花梅は、つぼみと若い枝が黄緑色をしています。花は青白い色をしています。
緋梅系の品種の特徴
「緋梅系」は、紅色の花がほとんどですが、枝の髄(切断面)の色が赤ければ、花は白くても、この系統に分類されます。「緋梅系」は、2つの性「紅梅性」「緋梅性」に分類されます。
「紅梅性(こうばいしょう)」に属する花梅は、花の色が明るい紅色をしています。若枝の色が緋梅性のものほど濃くならず、緑色がかっています。
「緋梅性(ひばいしょう)」の花梅は、紅梅のうちで、特に花色が濃い紅色から緋色をしている花梅はこのグループに属します。緋梅性の多くは樹勢が弱く、若い枝が黒褐色に日焼けします。ちなみに緋色とは、やや黄色みのある鮮やかな赤色のことを指します。
豊後系の品種の特徴
「豊後系」は、アンズとの雑種性が強い種類で、花梅、実梅の両方に当てはまります。「豊後系」は、2つの性「豊後性」「杏性」に分類されます。
「豊後性(ぶんごしょう)」に属する花梅は、アンズとの雑種性の強い梅です。花は大輪で淡紅色のピンク色が多く遅咲きですが、花の香りはそれほど高くないです。
「杏性(あんずしょう)」に属する花梅は、豊後性によく似ますが、それよりも枝が細く葉も小さいです。葉面に毛はなく、枝の色は灰褐色をしており、花の香りはそれほど高くなく、遅咲きが多いです。
系統ごとの梅の名称まとめ
「野梅系」「緋梅系」「豊後系」それぞれの分類を、わかりやすいようにまとめてみます。
同じ性でも、「一重咲き」や「八重咲き」もあります。花梅には、おのおの名称までつけられているので、一般の人には見分けがつかないことが多いと思います。
ここでは、各々の花梅(名称)が、どの系統のどの性に当てはまるのか、まとめてみました。
野梅系に属する花梅の名称
野梅性一重
曙(あけぼの)・梓弓(あずさゆみ)・扇流し(おうぎながし)・通い小町(かよいこまち)・紅冬至(こうとうじ)・古今集(こきんしゅう)・日月(じつげつ)・雪月花(せつげつか)・田毎の月(たごとのつき)・茶青花(ちゃせいか)・冬至(とうじ)・白鷹(はくたか)・初雁(はつかり)・一重寒紅(ひとえかんこう)・芳流閣(ほうりゅうかく)・舞扇(まいおうぎ)・道知辺(みちしるべ)・三吉野(みよしの)・米良(めら)・烈公梅(れっこうばい)
野梅性八重
一流(いちりゅう)・宇治の里(うじのさと)・黄金梅(おうごんばい)・鴬宿(おうしゅく)・春日野(かすがの)・月宮殿(げっきゅうでん)・見驚(けんきょう)・香篆(こうてん)・水心鏡(すいしんきょう)・玉垣(たまがき)・玉簾(たますだれ)・玉牡丹(たまぼたん)・長寿(ちょうじゅ)・花座論(はなざろん)・都錦(みやこにしき)・明星(みょうじょう)・柳川絞り(やながわしぼり)・八重野梅(やえやばい)・八重寒紅(やえかんこう)・輪違い(りんちがい)
紅筆性一重
古今欄(こきんらん)・西王母(せいおうぼ)・紅筆(べにふで)
紅筆性八重
内裏(だいり)・八重海棠(やえかいどう)・
難波性八重
浮牡丹(うきぼたん)・玉拳(ぎょっけん)・故郷の錦(こきょうのにしき)・御所紅(ごしょべに)・難波紅(なにわこう)・鄙の都(ひなのみやこ)・蓬莱(ほうらい)
青軸性一重
金獅子(きんじし)・白玉梅(しらたまばい)・月影(つきかげ)・月の桂(つきのかつら)・緑蕚(りょくがく)
青軸性八重
大輪緑蕚(たいりんりょくがく)・緑蕚(りょくがく)
緋梅系に属する花梅の名称
紅梅性一重
大盃(おおさかずき)・玉光(ぎょっこう)・佐橋紅(さばしこう)・東雲(しののめ)・鈴鹿の関(すずかのせき)・関守(せきもり)・夏衣(なつごろも)・一重唐梅(ひとえとうばい)・雛曇(ひなぐもり)・緋梅(ひばい)・姫千鳥(ひめちどり)・紅千鳥(べにちどり)・紅鶴(べにづる)・森の関(もりのせき)・雪灯篭(ゆきどうろう)・雪の曙(ゆきのあけぼの)
「紅梅性八重」
幾夜寝覚(いくよねざめ)・鴛鴦(えんおう)・鹿児島紅(かごしまこう)・錦光(きんこう)・黒雲(くろくも)・公輝(こうき)・五節の舞(ごせちのまい)・蘇芳梅(すおうばい)・緋の司(ひのつかさ)・八重唐梅(やえとうばい)・蓮久(れんきゅう)
豊後系に属する花梅の名称
豊後性一重
入日の海(いりひのうみ)・大湊(おおみなと)・園の雪(そののゆき)・谷の雪(たにのゆき)・一重豊後(ひとえぶんご)・巻立山(まきたつやま)・真鶴(まなづる)・桃園(ももぞの)・乱雪(らんせつ)・労謙(ろうけん)
豊後性八重
叡山白(えいざんはく)・乙女の袖(おとめのそで)・開運(かいうん)・雲井(くもい)・駒止(こまどめ)・桜梅(さくらばい)・千歳菊(ちとせぎく)・八朔(はっさく)・緋の袴(ひのはかま)・未開く紅(みかいこう)・武蔵野(むさしの)・紋隠し(もんかくし)・八重揚羽(やえあげは)・八重豊後(やえぶんご)・大和牡丹(やまとぼたん)・楊貴妃(ようきひ)・淋子梅(りんしばい)
杏性
江南所無(こうなんしょむ)