枝垂れ梅はどの枝を切ったらいいかわからない!

今回は、「枝垂れ梅はどの枝を切ったらいいかわからない!」という東京都・I様の疑問を、いただいた写真を元に、庭師歴25年の経験から剪定や手入れの方法を解説していきます。

「どの枝を切ればいいか分からない」というのは、枝垂れ梅を育てる方なら、誰もが一度はぶつかる悩みです。普通の木と違って枝が垂れているので、よけいに迷ってしまいますよね。最後まで読んでいただければ、切る枝と残す枝の見分け方がはっきり分かり、自信を持ってハサミを入れられるようになります。

解決したいこと

「枝垂れ梅はどの枝を切ったらいいかわからないので教えてもらいたい!」というご相談内容です。1枚の写真を送っていただきました。

1. まず覚えるのはこれだけ!枝垂れ梅の剪定の大原則

具体的な解説に入る前に、まず枝垂れ梅の剪定でいちばん大切な「大原則」をお伝えします。結論として、枝垂れ梅は「真下に向かう枝は切る、外側で上に向かう枝は残す」、これさえ覚えれば大丈夫です。

なぜこの原則が大切なのでしょうか。枝垂れる木は、上に向かって伸びた枝が、やがて自分の重みで自然と下に垂れてきます。だから、上向きの枝を残しておけば、一度上に伸びてから優雅に垂れ下がり、美しいカーブを描くのです。

たとえるなら、これは噴水と同じです。噴水の水は、いったん勢いよく上に上がってから、放物線を描いて美しく落ちてきますよね。枝垂れ梅の枝も、上向きの枝が一度上に伸びてから垂れるからこそ、あの優雅な姿になるのです。

逆に、最初から真下に向かって伸びている枝を残すと、ただダラリと下がるだけで、美しいカーブが生まれません。それどころか、下のほうがゴチャゴチャと重苦しくなってしまいます。だから、真下に向かう枝は切るのです。

この「下向きは切る、上向きは残す」という大原則さえ頭に入れておけば、これから説明する内容がすんなり理解できます。難しく考えず、まずはこの一文だけ覚えてください。

2. 枝垂れ梅の剪定について

それでは、いただいた写真を元に、枝垂れ梅の基本的な剪定を、図で解説していきます。

結論として、剪定の基本は「不要な枝を元から切り、伸びすぎた枝は半分くらいに切り、真下の枝は完全に切る」ことです。順番に見ていきましょう。

まず、枝垂れ梅の上半分から見ていきます。次の画像を見てください。

枝垂れ梅の上半分を拡大して、切る位置を赤線で示しました。

基本的には、樹形を見ながら、不要な枝は生えている元の部分(付け根)から切ってください。中途半端な位置で切るのではなく、付け根からスッと切るのが、見た目をきれいにするコツです。

そして、伸びすぎた枝は、だいたい半分くらい切るか、枝が落ちかかっているところで切ると、ちょうどよいです。枝が自然に垂れ始めている位置で切ると、その先がきれいなカーブを描いてくれます。

そして、いちばん大切なのが、真下に向かって伸びる枝です。これは、完全に切った方がよいです。先ほどの大原則の通りですね。

次に、枝垂れ梅の下半分を見ていきます。次の画像を見てください。

枝垂れ梅の下半分を拡大して、切る位置を赤線で示しました。

上半分と同じように、不要な枝は生えている元の部分から切ってください。伸びすぎた枝は、だいたい半分くらいか、枝が落ちかかっているところで切ると、ちょうどよいです。そして、真下に向かって伸びる枝は、完全に切った方がよいです。

さらに、I様の写真を見ると、幹に向かって伸びている枝(内向き枝)があるようなので、これも切って整理しておいた方がよいです。

ここで、仕立て方の大切なコツをお伝えします。枝が伸びる向きは、幹を中心に考えると、外側で、しかも上に枝が伸びるように仕立ててあげます。「外側へ、上へ」です。そうすると、見栄えのよい樹形に整うはずです。

なぜ「外側へ、上へ」なのか。内側に向かう枝を残すと、枝が幹の周りでゴチャゴチャと混みあい、風通しも日当たりも悪くなります。外側で上を向いた枝を残せば、枝が外へ外へと広がって垂れ、すっきりとした美しい枝垂れになるのです。これは、傘を広げるときに、骨が外側に向かって開くからきれいな形になるのと、似ていますね。

3. 写真で枝垂れ梅の枝がどのように伸びるか想定

剪定をしたら、その後どうなるのか。先のことが分かると、安心して切れますよね。ここでは、今回赤線で剪定したら、将来どのように枝が伸びるかを想定した画像を、上半分で作りました。

結論として、上向きの枝を残せば来年そこに花が咲き、下向きの枝は早めに取れば後が楽になります。

次の画像を見てください。

緑の線は、上側から出るので、そのまま伸ばしてよい枝です。上手くいけば、この緑色の枝に花芽がついて、来年咲くでしょう。つまり、残した上向きの枝が、来年の花を咲かせてくれるのです。

一方、黄色の線は、枝の下側から出ていて、写真を見て分かるように、うっとうしくなる不要な枝です。

ここで、初心者の方が楽になるコツをお伝えします。この黄色い枝(下向きの枝)は、新芽が少し伸びて方向が確認できて、不要だと分かったら、早めに切り取っておくと後々楽です。小さいうちなら、手で簡単にもぎ取れます。大きくなってから切ると、ハサミも必要ですし、木への負担も大きくなります。雑草を小さいうちに抜くのが楽なのと、同じ考え方ですね。

黄色い枝を切り取ると、この写真のように仕上がります。

どうでしょうか。下向きの不要な枝を取り除いただけで、ずいぶんスッキリして、上品な枝垂れの形になりましたよね。これが、「下向きは切る、上向きは残す」という大原則の効果です。

4. 失敗しない!花芽と葉芽の見分け方

ここからは、元記事になかった大切な内容を加えます。「どの枝を切るか」と並んで大切なのが、「花芽を切らないこと」です。結論として、花芽と葉芽の見分けさえできれば、枝垂れ梅の剪定で大きな失敗をすることはありません。

なぜなら、枝垂れ梅の花が咲かない失敗のほとんどが、知らずに花芽を切ってしまうことが原因だからです。逆に言えば、花芽を見分けて残すことさえできれば、安心して剪定ができます。

具体的な見分け方は、とても簡単です。丸くてふっくら太っているのが「花芽」、細くてとがっているのが「葉芽」です。花芽はこれから花になる赤ちゃんなので、ぷっくりしています。葉芽は葉っぱになるので、鉛筆の先のようにツンととがっています。

たとえば、ぶどうの粒のように丸くなっている芽を見つけたら、それが花芽です。指でそっと触って「丸いな」と感じたら、来年の花だと思って、絶対に切らないようにしましょう。

ここで、枝垂れ梅ならではの大切なポイントをお伝えします。枝垂れ梅は、古い枝には花がつきにくく、花後に伸びた新しい枝に花芽がつきます。今回I様におすすめした「上向きの枝を残す」という剪定は、まさにこの新しい花芽がつく枝を大切にする考え方なのです。残した緑色の上向きの枝に、来年花が咲くと説明したのは、そういう理由です。

5. いつ切ればいい?枝垂れ梅の剪定時期

「どの枝を切るか」が分かったら、次は「いつ切るか」も大切です。結論として、枝垂れ梅の剪定は、葉が落ちた後の「冬の休眠期(10月~芽吹く前)」が最適です。

なぜ冬がよいのでしょうか。理由は2つあります。一つは、この時期はすでに花芽が確定しているので、丸い花芽を見分けて残しながら剪定できるからです。もう一つは、葉が落ちて枝の形がよく見えるので、どこを切ればいいか分かりやすいからです。

たとえるなら、葉が茂った時期の剪定は「目隠しをして片づけをする」ようなもの、葉が落ちた冬の剪定は「明るい部屋で片づけをする」ようなものです。どちらが失敗しにくいかは、言うまでもありませんね。I様も、葉が落ちた冬に、今回お伝えした「下向きは切る、上向きは残す」を実践すると、いちばん失敗が少なくなります。

ここで、注意点をお伝えします。花が終わってすぐの春から初夏に、長く垂れた枝を強く切るのは避けてください。なぜなら、その時期に切ると、来年の花芽がつくはずの新しい枝を失ってしまうからです。「花が終わったから、伸びた枝を切ろう」と思いがちですが、それが花を減らす原因になります。枝垂れ梅は「花後はそっとしておき、冬に整える」と覚えておきましょう。

ただし、下向きの不要な枝や、その新芽は、時期に関わらず、小さいうちに手で取り除いてかまいません。これは花芽がつく枝ではないので、取っても花は減りません。

6. きれいな樹形に仕立てる3つのコツ

I様のように「どの枝を切るか」が分かってきたら、次は「美しく仕立てるコツ」も知っておきましょう。結論として、枝垂れ梅を美しく仕立てるには「外側・上向きの枝を残す」「懐に空間を作る」「高さの上をしっかり作る」の3つがコツです。

なぜこの3つかというと、枝垂れ梅は、上の骨格と内側の空間が美しさを決めるからです。順番に見ていきましょう。

1つ目のコツは「外側・上向きの枝を残す」ことです。これは何度もお伝えしている通りです。幹を中心に、外側へ、上へと伸びる枝を残すことで、枝が外に広がって優雅に垂れ、すっきりした形になります。

2つ目のコツは「懐(ふところ=幹に近い内側)に空間を作る」ことです。内側に向かう枝や、混みあった枝を取り除いて、幹の周りをスッキリさせます。内側に空間があると、枝垂れる枝が引き立ち、風通しも良くなって病害虫も防げます。これは、美しい滝の水が、上からきれいに落ちてくるのに似ています。途中に邪魔なものがないからこそ、美しく見えるのです。

3つ目のコツは「高さの上をしっかり作る」ことです。枝垂れる木は、上の部分(高さ)が肝心です。上の骨格をしっかり作ってやらないと、下ばかりが重苦しくなってしまいます。天辺あたりで枝がうまく垂れ始める位置を見極めて、そこを木のてっぺんとして仕立てるとよいでしょう。

この3つを意識すると、ただ枝を切るだけでなく、「美しい一本の木」を作っていく楽しさが分かってきます。剪定に使う道具も大切です。よく切れる剪定ばさみなら、切り口がきれいで木に優しく、細かい枝も思い通りに切れます。剪定バサミは、切れ味と耐久性に優れた「おの義(推奨)」のものを選べば間違いありません。

7. 枝垂れ梅の剪定に関するQ&A(よくある質問)

最後に、枝垂れ梅の剪定について読者の方からよく寄せられる質問にお答えします。あなたの疑問もきっとこの中にあるはずです。

Q1:結局、どの枝を切ればいいのですか?いちばんシンプルに教えてください。

いちばんシンプルに言うと「真下に向かう枝は切る、外側で上に向かう枝は残す」です。これだけ覚えれば大丈夫です。枝垂れ梅は、上向きの枝が自然に垂れて美しいカーブを作るので、上向きを残します。真下に伸びる枝はダラリと下がって重苦しくなるので、切ります。迷ったら「下向きの枝を切る」ことから始めてください。

Q2:伸びすぎた長い枝は、どこで切ればいいですか?

伸びすぎた枝は、だいたい半分くらいの位置か、枝が自然に垂れ落ちかかっているところで切るとちょうどよいです。垂れ始めている位置で切ると、その先がきれいなカーブを描いてくれます。ただし、切りすぎると枝垂れの趣がなくなるので、長く垂れる美しさを残す程度にとどめましょう。

Q3:幹のほうに向かって伸びている枝があります。これは切るべきですか?

はい、幹に向かって伸びる枝(内向き枝)は、切って整理した方がよいです。内向きの枝を残すと、幹の周りで枝が混みあい、風通しや日当たりが悪くなって、樹形も乱れます。枝は「外側へ、上へ」伸びるように仕立てるのが基本です。内向き枝を取り除くと、懐に空間ができて、ぐっと美しい樹形になります。

Q4:枝の途中で切るのと、付け根から切るのは、どちらがいいですか?

不要な枝は、付け根(生えている元の部分)から切るのが基本です。中途半端な位置で切ると、そこから新しい枝がたくさん出て、かえってゴチャゴチャしてしまうからです。一方、残したい枝を短くする場合は、枝が垂れ始める位置や半分くらいで切ります。「不要な枝は付け根から、残す枝は適度な長さに」と覚えておきましょう。

Q5:花芽を切らないか心配です。見分け方はありますか?

いちばん簡単なのは「丸くふっくらが花芽、細くとがっているのが葉芽」と覚えることです。指でそっと触って「ぷっくりしているな」と感じたら花芽です。葉が落ちた冬の剪定なら、丸い花芽がはっきり見えるので見分けやすいです。それでも迷うときは「切らない」のが安全です。特に、残す上向きの枝についた丸い芽は大切にしてください。

Q6:剪定はいつやればいいですか?今すぐ切っても大丈夫ですか?

本格的な剪定は、葉が落ちた冬の休眠期(10月~芽吹く前)がおすすめです。花芽が見やすく、枝の形も分かりやすいからです。ただし、真下に向かう不要な枝や、その新芽は、時期に関わらず小さいうちに取ってかまいません。花が終わってすぐの時期に、垂れた枝を強く切るのは、来年の花を減らすので避けましょう。

Q7:下向きの枝から新芽が出てきました。どうすればいいですか?

下向きの枝から出る新芽は、不要なので、見つけ次第取り除くのがおすすめです。小さいうちなら、ハサミを使わなくても手で簡単にもぎ取れます。早めに取っておくと、無駄な枝に栄養を取られず、後で大きな枝を切る手間も省けて楽になります。「下向きの新芽は小さいうちに取る」を習慣にすると、樹形がきれいに保てます。

Q8:切りすぎてしまわないか不安です。どのくらいで止めればいいですか?

不安なときは「下向きの枝と内向きの枝を切る」ことに絞れば、切りすぎる心配はほとんどありません。上向きの枝と花芽は残すので、花が減ることもありません。一度にすべてを完璧にしようとせず、明らかに不要な枝だけを整理する、という気持ちで十分です。物足りないくらいでちょうど良いと考えてください。

8. まとめ:「下向きは切る、上向きは残す」を覚えれば大丈夫

この記事では、東京都のI様の事例をもとに、枝垂れ梅のどの枝を切ればいいかについて、詳しく解説しました。

今日お伝えしたことを、もう一度シンプルにまとめます。枝垂れ梅の剪定は「真下に向かう枝は切る、外側で上に向かう枝は残す」が大原則。不要な枝は付け根から、伸びすぎた枝は半分くらいか垂れ始める位置で切ること。幹に向かう内向き枝も切って、懐に空間を作ること。残した上向きの枝に来年花が咲くこと。そして、剪定は花芽が見やすい冬の休眠期に行うこと。これらを押さえれば、もう「どの枝を切ればいいか分からない」と迷うことはありません。

枝垂れ梅の剪定は、最初は難しそうに見えますが、「下向きは切る、上向きは残す」というたった一つの原則を覚えるだけで、ぐっと簡単になります。あとは、その原則に沿って、不要な枝を少しずつ整理していくだけです。

まずはご自分の枝垂れ梅をよく観察し、どの枝が真下を向いていて、どの枝が外側で上を向いているかを見てみてください。そして、自信を持って、下向きの枝から取り除いてみましょう。きっと、見違えるほどスッキリと美しくなるはずです。

良い道具は、楽しい手入れの相棒になります。剪定バサミは切れ味と耐久性に優れた「おの義(推奨)」を一本持っておけば、枝垂れ梅と長く付き合っていく心強い味方になってくれます。

I様、そしてこの記事を読んでくださったあなたの枝垂れ梅が、これからも毎年春に、優雅で美しい花を咲かせ続けることを心より願っております。