春の天敵!ウメの木に群がるアブラムシを退治する安心安全な方法

はじめに

あたたかい春の日、梅の木がやわらかい新芽を出して「さあ、これからどんどん育つぞ」というその矢先。葉っぱの裏や、のびたばかりの若い芽に、緑色や黒っぽい小さな虫がびっしりと群がっているのを見つけて、思わず「うわっ」と声が出てしまった。そんな経験はありませんか。そう、それが春の天敵「アブラムシ」です。

「たかが小さな虫でしょう」とあなどってはいけません。アブラムシは、放っておくとあっという間に数を増やし、梅の大切な栄養をどんどん吸い取ってしまいます。せっかく出た新芽が、虫のせいでちぢれてしまったり、木が弱ってしまったり。さらにやっかいなことに、このアブラムシは「すす病」という別の病気まで連れてくる、困った虫なのです。大切に育てている梅の木だからこそ、なんとかしてあげたいですよね。

でも、ご安心ください。アブラムシは、正しい方法を知っていれば、決してこわい相手ではありません。しかも、強い殺虫剤を使わなくても、お台所にあるものや、ちょっとした工夫で、安心・安全に退治することができるのです。お孫さんやペットがいるご家庭でも、これなら心配いりません。この記事では、アブラムシの正体から、家庭でできる安全な退治法、そして二度と寄せつけないための予防法まで、庭師の目線でとことんわかりやすくお伝えします。そして最後には、じつは虫が寄りつきにくい木を育てる秘けつが「剪定(せんてい=枝を切って整えること)」にあるという、大切なお話も。この記事を読み終えるころには、「これでもう、アブラムシはこわくない」と、きっと自信を持っていただけるはずです。

まず敵を知ろう!アブラムシってどんな虫? ~正体がわかれば対策できる~

アブラムシを退治する第一歩は、「相手がどんな虫なのか」を知ることです。なぜなら、敵の正体や弱点がわかれば、むやみにこわがらず、正しく効果的に対応できるからです。

アブラムシは、体の大きさが一~四ミリほどの、とても小さな虫です。色は緑色のものが多いですが、黒っぽいものや赤っぽいものもいます。やわらかい新芽や、若い葉の裏、つぼみのあたりに、ぎっしりと群れているのが特徴です。動きはとてものんびりしていて、すばやく逃げまわることはありません。これは、私たちが退治するうえで、じつはありがたい弱点でもあります。

おそろしいほどの増えるスピード

アブラムシのいちばんこわいところは、その「増えるスピード」です。なんとアブラムシのメスは、オスがいなくても、卵ではなく赤ちゃんを直接どんどん産むことができます。しかも生まれた赤ちゃんは、たった十日ほどで、もう赤ちゃんを産めるおとなになります。つまり、一匹を見つけたときには、その裏に何十匹、何百匹とひそんでいる、と考えたほうがよいのです。だからこそ、「見つけたらすぐに、早めに対処する」ことが何よりも大切になります。

アブラムシがもたらす三つの被害

アブラムシが引き起こす困りごとは、大きく三つあります。一つ目は、新芽や葉から栄養(汁)を吸い取って、木を弱らせること。二つ目は、吸われた新芽がちぢれたり、変形したりして、うまく育たなくなること。そして三つ目が、いちばんやっかいな「すす病」です。アブラムシは、汁を吸ったあとに甘いベタベタした排せつ物を出します。この甘い汁を栄養にして、葉や枝に黒いカビが繁殖し、葉が真っ黒にすすけてしまうのです。こうなると木は光を受けられず、ますます弱ってしまいます。

つまり、アブラムシは「とても小さいけれど、ものすごい速さで増え、木を弱らせ、病気まで連れてくる」虫です。だからこそ、正体を知って、早め早めに対処することが、何よりの対策になるのです。

お台所でできる!安心安全なアブラムシ退治法 ~薬を使わない昔ながらの知恵~

アブラムシ退治のいちばんうれしい方法は、「家庭にあるもので、安全に退治できる」ことです。なぜなら、強い殺虫剤を使わなくても、昔ながらの知恵やちょっとした道具で、じゅうぶん効果が得られるからです。お孫さんやペットのいるご家庭でも安心して試せる方法を、いくつかご紹介します。

方法1:水でいきおいよく流す ~いちばん手軽で安全~

もっとも手軽で安全なのが、ホースやシャワーの水を、いきおいよくかけて吹き飛ばす方法です。アブラムシは体が小さくて力が弱く、動きものんびりしているので、強い水流であっけなく落ちてしまいます。一度落ちたアブラムシは、自分で木に登り直すことがほとんどできません。葉の裏側を狙って、シャーッと水をかけてあげましょう。薬をいっさい使わないので、これ以上安全な方法はありません。ただし、新芽がやわらかい時期は、いきおいが強すぎると芽を傷めるので、加減してください。

方法2:手や粘着テープで取り除く ~数が少ないとき~

まだ数が少ないうちなら、手袋をした手でつぶしたり、ガムテープやセロハンテープのねばる面で、ペタペタと貼りつけて取り除いたりする方法も効果的です。地味なようですが、確実で、もちろん薬も使いません。毎日少しずつチェックして、見つけしだい取り除けば、大発生をふせげます。

方法3:石けん水・牛乳スプレー ~昔ながらの知恵~

昔から知られているのが、台所用の中性洗剤(せんざい)をうすめた「石けん水」や、「牛乳」をスプレーする方法です。石けん水は、アブラムシの体をおおって息ができなくする働きがあります。牛乳は、かわくときに膜を作って、同じようにアブラムシをふさいでしまいます。霧吹きに入れて、虫に直接かけてあげましょう。ただし、どちらもかけたあとに葉に成分が残ると、べたついたり、葉を傷めたりすることがあるので、しばらくしてから水で洗い流してあげると安心です。

方法4:木酢液(もくさくえき)を使う ~寄せつけない香り~

園芸店で売っている「木酢液」も、昔ながらの自然な方法です。これは木を炭(すみ)にするときにとれる液体で、独特のいぶした香りがします。うすめて木にスプレーすると、その香りをアブラムシが嫌って、寄りつきにくくなります。退治というより、予防に近い使い方です。使うときは、必ず説明書に書かれた倍率にうすめて使ってください。

つまり、「水で流す・手で取る・石けん水や牛乳・木酢液」と、薬を使わない方法はたくさんあります。まずはこうした安心・安全な方法から試してみるのが、初心者の方にはいちばんおすすめです。

自然の力を借りる!アブラムシの天敵を味方につける方法

じつは、私たちが手を下さなくても、アブラムシを食べてくれる「自然の用心棒」がいます。なぜなら、自然界にはアブラムシを大好物にしている生き物がいて、その力を借りれば、薬を使わずにアブラムシを減らせるからです。

いちばん有名な用心棒が「テントウムシ」です。あの赤い体に黒い水玉模様のかわいらしいテントウムシは、じつはアブラムシをむしゃむしゃ食べる、たのもしいハンターなのです。一匹のテントウムシが、一生のあいだに何百匹ものアブラムシを食べてくれるといわれています。ほかにも、テントウムシの幼虫(成虫とは見た目がちがう、細長い虫です)や、クサカゲロウ、ヒラタアブの幼虫なども、アブラムシを食べてくれる心強い味方です。

天敵を守るために、薬は控えめに

ここで大切なことがあります。強い殺虫剤をまいてしまうと、アブラムシだけでなく、せっかくのテントウムシたちまで一緒に死なせてしまうのです。すると、用心棒のいなくなった木では、生き残ったアブラムシがふたたび大発生してしまう、ということが起こります。これでは本末転倒です。だからこそ、できるだけ薬に頼らず、自然のバランスを生かす方が、長い目で見るとうまくいくのです。

テントウムシが来やすい庭づくり

テントウムシに来てもらうには、薬を控えめにすることに加えて、庭にいろいろな植物を育てるのも効果的です。花がたくさん咲く庭は、テントウムシなどの虫が集まりやすくなります。テントウムシを見つけたら、けっして追いはらわず、「うちの庭の用心棒さん、ありがとう」という気持ちで、そっと見守ってあげてください。

つまり、アブラムシ退治は、自分だけでがんばる必要はありません。テントウムシをはじめとする自然の天敵を味方につければ、薬を使わずに、楽に、そして長く木を守ることができるのです。

退治より大事?アブラムシを寄せつけない予防法

アブラムシ対策で本当に大切なのは、じつは「退治」よりも「予防」です。なぜなら、発生してから退治するより、そもそも寄せつけないようにするほうが、ずっと楽で、木へのダメージも少ないからです。ここでは、日ごろからできる予防のコツをお伝えします。

こまめに観察する

いちばんの予防は、なんといっても「こまめに木を見ること」です。春先、新芽がのびてくる時期は、アブラムシがもっとも発生しやすいときです。この時期は、二~三日に一度は、新芽や葉の裏をのぞいてみましょう。一匹、二匹のうちに見つけて取り除けば、大発生をふせげます。早期発見こそが、最大の予防なのです。

チッ素肥料(ひりょう)を与えすぎない

意外と知られていないのが、肥料のあげすぎがアブラムシを呼ぶ、ということです。とくに「チッ素」という成分の多い肥料をあげすぎると、葉や芽がやわらかく、ぐんぐんのびすぎてしまいます。じつはアブラムシは、このやわらかい新芽が大好物なのです。よかれと思ってたくさん肥料をあげることが、かえってアブラムシを呼びよせてしまうことがあるので、肥料は適量を守りましょう。

キラキラ光るものでよせつけない

アブラムシは、キラキラと光るものを嫌う性質があります。これを利用して、木のまわりに銀色のテープやアルミホイルをぶら下げておくと、アブラムシが近寄りにくくなります。昔から畑でも使われてきた、自然にやさしい予防法です。

そして、いちばん大切な「風通し」

そして、もっとも根本的で大切な予防が「風通しをよくすること」です。アブラムシは、枝が混み合ってジメジメした、風の通らない場所が大好きです。逆に、風がよく通る場所は苦手です。木の枝が混み合っていると、アブラムシにとって居心地のよいかくれ家を、たくさん作ってしまうことになるのです。この「風通し」をよくする方法こそが、次にお話しする「剪定」なのです。

つまり、「こまめな観察・肥料の適量・キラキラよけ・風通し」が、アブラムシを寄せつけない四つの予防法です。退治に追われる前に、これらの予防を心がけることが、いちばん楽な対策なのです。

【プロの視点】虫が寄りつかない木を育てる秘けつは「剪定」だった

ここからが、梅の専門サイトだからこそお伝えしたい、いちばん大切なお話です。じつは、アブラムシをはじめとする害虫を根本から減らす最強の方法が、薬でも道具でもなく「剪定(せんてい)」なのです。なぜなら、アブラムシが大好きな「混み合ってジメジメした、風の通らない環境」を、剪定でなくすことができるからです。

思い出してください。予防のところで、アブラムシは風通しの悪い場所を好む、とお伝えしました。枝が好き勝手にのびて、葉がうっそうと茂った木の内側は、風も通らず、薄暗くてジメジメしています。これはアブラムシにとって、外敵のテントウムシからも見つかりにくい、最高のかくれ家なのです。

剪定が、虫のかくれ家をなくす

剪定で混み合った枝を切り、枝と枝のあいだにゆとりを作ってあげると、木の内側まで風がすうっと通りぬけます。風通しのよい、明るくからっとした環境は、アブラムシにとって居心地が悪く、住みつきにくくなります。さらに、見通しがよくなることで、アブラムシを食べてくれるテントウムシたちも活動しやすくなります。剪定は、害虫のかくれ家をなくし、同時に味方の天敵を呼びこむ、一石二鳥の予防法なのです。

すす病まで一緒にふせげる

しかも、剪定で風通しと日当たりをよくすると、アブラムシが連れてくる「すす病」まで予防できます。すす病の黒いカビも、ジメジメした環境を好むからです。風が通り、光が届く木では、たとえ少しアブラムシがいても、すす病が広がりにくくなります。つまり剪定は、虫と病気の両方を、おおもとからふせいでくれるのです。

早期発見もしやすくなる

さらに、剪定ですっきり整った木は、新芽も葉の裏も、一本一本がよく見えます。だから、アブラムシがついても、すぐに気づいて手を打てます。うっそうと茂った木では、奥にひそむアブラムシに気づいたときには手おくれ、ということもありますが、風通しよく仕立てた木なら、早期発見がぐっとやりやすくなるのです。

つまり、アブラムシに悩まされない木を育てる本当の秘けつは、退治をくりかえすことではなく、日ごろの「剪定」にあります。「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」という昔の言葉のとおり、梅はしっかり切ってあげることで、風通しと日当たりがよくなり、虫にも病気にも負けない元気な木になります。アブラムシ対策を考えている今こそ、ぜひその土台となる「剪定」に目を向けてみてください。当サイトの剪定記事も、あわせて参考にしていただければうれしいです。

読者からよくある質問(Q&A)

Q1. アブラムシは、放っておいたら自然にいなくなりますか?

A. 自然に減ることもありますが、放っておくのはおすすめしません。アブラムシはものすごい速さで増えるので、放置すると大発生し、木が弱ったり、すす病を引き起こしたりします。テントウムシなどの天敵が来てくれれば減りますが、確実とはいえないので、見つけたら早めに対処しましょう。

Q2. 牛乳スプレーは、本当に効きますか?

A. はい、効果があります。牛乳がかわくときにできる膜が、アブラムシをおおって息をできなくします。ただし、虫に直接かからないと効きませんし、かわいたあとはベタついたり、においが出たりするので、しばらくしてから水で洗い流すのがコツです。晴れた日の午前中に行うとよく効きます。

Q3. お台所の食器用洗剤を使っても大丈夫ですか?

A. 中性洗剤をうすめて使うことはできますが、濃すぎると葉を傷めることがあります。水でしっかりうすめ、目立たない葉で試してから使いましょう。かけたあとは、水で洗い流してあげると、木にやさしく安心です。

Q4. テントウムシを見つけたら、梅の木に移してもいいですか?

A. とてもよい方法です。アブラムシのいる木にそっと放してあげれば、用心棒として働いてくれます。ただし、無理に捕まえると弱らせてしまうので、やさしくあつかってください。庭にテントウムシが来やすいよう、薬を控えめにすることも大切です。

Q5. アブラムシがいた新芽が、ちぢれてしまいました。元にもどりますか?

A. 一度ちぢれてしまった葉や芽は、残念ながら元の形にはもどりません。ですが、アブラムシを退治して木が元気を取りもどせば、新しい芽は正常に育ちます。傷んだ葉は無理に取らなくても大丈夫ですが、気になるようなら取り除いてもかまいません。

Q6. 薬を使う場合、どんなものを選べばいいですか?

A. どうしても薬が必要なときは、園芸店で「アブラムシ用」と書かれたものを選び、説明書の使い方・量・時期を必ず守ってください。実を食べる梅では、収穫前に使ってよい時期に決まりがあるものもあるので、よく確認しましょう。心配な方は、まず安全な方法から試すのがおすすめです。

Q7. 毎年同じ時期にアブラムシが出ます。どうすれば?

A. アブラムシは春の新芽の時期に発生しやすいので、その時期の前から予防を始めるのが効果的です。冬の剪定で風通しをよくしておき、春先はこまめに新芽をチェックしましょう。発生のパターンがわかっているなら、先回りして対策できるのが強みです。

Q8. 鉢植えの梅にもアブラムシはつきますか?

A. はい、鉢植えにもつきます。対策は地植えと同じですが、鉢植えは置き場所を動かせるのが利点です。風通しと日当たりのよい場所に置き、新芽の時期はこまめに観察しましょう。ベランダなどでは、水で流す方法が手軽で安全です。

Q9. アリがたくさん木に登っているのは、アブラムシと関係ありますか?

A. 大いに関係があります。アリは、アブラムシが出す甘い排せつ物が大好物で、アブラムシを天敵から守る「ボディーガード」のような役目をすることがあります。アリが多いときは、近くにアブラムシがいるサインかもしれません。木の幹をチェックしてみましょう。

Q10. 安全な方法を試しても減りません。どうすればいいですか?

A. 何度試しても大発生がおさまらない場合や、木が大きくて手が届かない場合は、無理をせず植木屋さんや専門の業者に相談するのも一つの方法です。プロは原因を見極め、適切な処置と、虫が寄りつきにくくする剪定までしてくれます。大切な木だからこそ、困ったときはプロの手を借りるのもかしこい選択です。

春に群がるアブラムシは、たしかにやっかいな相手ですが、正しく知って、早めに、そして安全に対処すれば、決してこわい虫ではありません。お台所にあるものや自然の天敵の力を借りれば、薬に頼らずとも、じゅうぶん木を守ることができます。そして何より、日ごろの剪定で風通しのよい木に育ててあげれば、アブラムシそのものが寄りつきにくくなります。大切なのは、春先にちょっと木に目を向けて、小さな変化に気づいてあげること。手をかけてあげれば、梅の木はきっと、美しい花と実で応えてくれます。やっぱり、梅の木って最高です。