枝垂れ梅だけでなく、枝垂れる木は上から下に向かって枝がたれ下がる習性があることはあなたもご存じのことだと思います。
ここでは、枝垂れ梅の習性を知ることで枝垂れる木特有の剪定方法を理解できるように解説します。
枝垂れ梅の習性ってなに?
大体の木は上に向かって枝が伸びるのをご存知かと思いますが、枝垂れる木の場合は枝が一度上に向かう仕草は見せますが、その後上に伸び続けるのではなく重力に身を任せるように方向転換をして下に向かって伸びていきます。
だから、上に向かって伸びる枝を切らないで残しておいても枝は自然と下に向かって伸びるので、この習性を利用するためには上向きの枝を残す必要があります。
逆に必要のない枝というのは枝のやや下部分から生え、下に向かって生えている枝や、太い枝であれば真横よりも下側から出ている枝は必ず下に向かって行きますので不要な枝なので、そのような徒長枝は樹勢にもよくないので伸びる前に見つけしだい全て切り取っておく方がよいです。
枝垂れ梅の習性と剪定の基本はお分かりいただけましたでしょうか?
図で表すと下図のように「黄色い線」で切れば良いわけです。
枝垂れる木は枝の切る位置により枝の向きが変わってきますので、樹形にも影響してきます。
下の左図を見てもらうと、基本に則って「赤い線」で切れば良いのですが、「青丸部分内」の「緑の線」で切ってしまうと、下右図のように木の内側に向かって枝が伸びるようになります。
今は1本の枝で解説しているので大したことがないように思えるかもしれませんが、これをすべての枝で行ってしまうと枝が内側に向かっていきますので、樹形全体が細く混雑した感じになってしまいます。
そうすると樹形の内部に枝が集まるようになり、内部には日が当たらなくなり、風通しも悪くなり、枯れ枝も増えますし、病害虫が発生しやすくなるので、樹勢が損なわれ結果的に花つきも悪くなります。
枝垂れ梅の気になる剪定の時期
枝垂れ梅を剪定するためには適切な時期を選んで行うのが良いです。
枝垂れ梅の剪定の時期は、花後に行ないます・・・と園芸書には書いてあるかもしれません。
しかし私の経験上、枝垂れ梅の剪定の時期は落葉後の冬期剪定で、普通の梅と同様10月頃~芽吹く(花芽がわかる)までの間の休眠期が一番良い時期であると思います。
冬期剪定の良い所は、枝垂れ梅が葉を落として休眠状態になることから強い剪定にも耐えられる時期だということです。そして枝の混み具合がよくわかりますので、交差していたり密になっていたりしているところが一目瞭然です。
この作業を葉が付いている時に剪定をするとなると、内部状況がよくわかりづらいことがありますし、余計な葉に養分を取られ樹勢を弱くしてしまい花が咲かなくなるということがあります。さらには枯れる元となるのでこの時期の剪定はおすすめしません。
一般の人達はどうしても、葉っぱが生い茂り、うっとうしくなった夏場に剪定をするものだと勘違いしています。でも木は切った後そこからさらに枝葉が伸びようとします。
ということはそこに養分が取られてしまうということなので、もしも花芽の形成時期に葉っぱに養分を取られてしまっていたら、それこそ来年の花芽の数を減らす原因になります。
結果的に切ったそこから芽を出そうと集中して栄養がいってしまい、花芽の数も減らす原因になってしまうので良いことなしです。
「でも冬期剪定まで待てない!」という場合は、次に説明する「枝垂れ梅の花芽のポイント」を抑えると、いつ切れば良いかが分かってきます。
枝垂れ梅の花を咲かせる剪定のポイント
枝垂れ梅の古い枝には花はつかないということは知っていましたか?
今年花が咲いた枝に来年もまた花が咲くのかというと実は咲かないのです。
どういうサイクルで花が咲くのかといいますと、今年花がついた枝に花が終わる頃に新芽が出始め、その新芽が花後に一斉に伸びます。
その年の夏に、この伸びたいわゆる充実した新枝に花芽が付いて、それが翌年の2月~3月頃から蕾が膨らんで花が咲くというわけなのです。
「枝垂れ梅は花後に切る」・・・と、ほとんどの園芸には書いてあるかもしれません。・・・が、しかしこれは盆栽や鉢植えの場合です。
ということで庭に生えている枝垂れ梅の木は花後に切ってはいけないというのがポイントです。
花後に切ってはいけない理由
花後に切ってはいけない理由は、花芽が確定する時期に関係しているのです。
枝垂れ梅の花芽の分化が始まるのは7月~8月ころで、9月~10月ころには花芽が形成されます。そして翌年春に蕾となって花が咲き、葉芽はその後新芽となります。
始めのうちは新芽に花芽も葉芽もないので、あまり早すぎる剪定をしてしまうと花芽よりも葉芽に樹勢が取られてしまうので花芽がつきにくくなり、翌春には花をつけなくなるようです。
このことからもわかるように、枝垂れ梅の剪定は花芽が確定した後にしないと来年の花芽の数を減らす結果となりますし、花芽が確定する前に切ってしまうと折角花芽になりかかっていたのも全部葉芽に変わってしまうのです。
庭に植えてある枝垂れ梅は木の勢いが強いので、切られたことで
「これは大変だ!」「もっと新しい枝を伸ばさなければいけない」
と思い込み、花芽が葉芽に変わってしまうわけなのです。
【結論】
剪定は花芽が確定した後、余裕を見て 10月ころからつぼみが膨らみ始めるまでの間に行うといいです。
このことからも 10月ころに花芽が完全に固まったのを見計らってから切るようにするのが間違いないです。
もしも 10月ころ枝垂れ梅の剪定をしようと思っていても、まだ葉が茂っていてなかなか樹形も見定めにくいと思います。
急いで枝垂れ梅の剪定をしなくても良いのであれば、葉が落ちてから剪定すると枝の混み具合が分かり効率よく作業できるので、葉が落ちた冬期に剪定するといいですよ。
枝垂れ梅を夏にする場合の剪定
今までお伝えしてきたとおり、枝垂れ梅の木は冬期にするのがおすすめですが、最悪の場合、夏に剪定しても・・・まあよいでしょう。
しかし毎年夏に切ってしまうと樹勢は悪くなる感じがしますので、できるだけ10月以降の冬期剪定をした方がよいです。
剪定は全体を見て形だけを整えるように、突発的に伸びたような枝を幹や太い枝から間引くように取り除きます。
これだけでもかなり空間ができるし形も整うと思いますよ。
この時期の剪定は、内部に日を当てて極力日陰にならないようにしたり、病害虫が発生しないように風通しを良くしたりするのが目的なので、ガッツリ強い剪定をすると樹勢を弱めたり花芽がつかなくなるので避けてください。
枝垂れ梅の剪定道具とケガをしないポイント
枝垂れ梅の剪定道具ですが、枝は意外と硬く、細いと思っても剪定バサミで太刀打ちできない場合もありますので、剪定バサミと場合によってはノコギリが必要になります。
切った枝を地面に置きっぱなしでいると時に注意が必要です。というのは太めの枝から出ている先の尖った短い枝があるのですが、これが意外とやっかいです。この枝を知らないで底の薄い靴などで踏んでしまうと簡単に貫通してしまい、足につき刺さることがあり、私は何度も痛い思いをしました。
気をつけているつもりでも意外とトゲのあるところを歩いてしまうものです。
あとひとつは命に係わる危険な行為があり、それはよく脚立を使って作業する方がいますが、なぜか歳をとればとるほど 脚立を使いたくなる方が多いです。
脚立は平らな場所では威力を発揮しますが、足が4本であるため不整地ではバランスが悪くなり、一瞬でもグラッとすると対応できずに落ちることになっています。
私は何十人と脚立から落ちて、命を亡くした人、半身不随や脳障害をおこした人たちを知っていますし、実際に見てきました。木1本のために命を落とすなんて悲惨な人生だと思います。
身近では、妻の父親が剪定作業中に3mの高さから脚立から落ちてコンクリートに頭を打ち、結局それが原因で亡くなった経緯があります。
お年寄りになればなるほど頑固なので、「俺は大丈夫!」と思わないで
4本足の脚立ではなく、絶対に3脚を使ってください!
人生を早く終わらせたくなければ、もしも3脚がない場合は剪定作業をしないか、業者に頼むなどで対応してください。
それでもまだ4本足の脚立で剪定しようとしているのであれば、お金と命とどちらが大切か一度考えることです。
枝垂れ梅の剪定方法
「桜切るバカ、ウメ切らぬバカ」という言葉があるように、枝垂れ梅の場合も剪定をしないと、木が茂り過ぎて花が咲かなかったりします。また、生い茂るということは当然日当たりや風通しが悪くなり、害虫の格好の溜まり場となります。
枝垂れ梅の剪定方法は、10月以降に全体的なシダレ具合を見て間引いたり、不要な枝を切ったりするとよいですし、その場合は外芽で適宜に切れば理想の樹形になるはずです。
不要枝を外すだけでも随分木の形が整うので、形を崩す立ち枝、見切り枝、下り枝、重なっている枝などの不要枝は付け根から切ります。
特に木の内側を向いて伸びた枝は、思い切ってきれいさっぱり取り除くとよいです。
枝垂れ梅の木の剪定のコツは懐を大きく作ると枝垂れる状態がきれいになります。
もしも枝垂れ梅を剪定しないで放任していると枝数がどんどん増え、その枝からその後もどんどん伸びて増えるので、樹冠の中には光が入らない状態になるので枝は枯れ貧弱になり、しだいに花芽がつきにくくなります。
アブラムシなどの秒害虫も多く発生することになります。
そこで冬場には必ず剪定をすると樹冠の中に光がよく入るので花がたくさんつくようになります。
枝垂れ梅の剪定方法のポイント
枝垂れ梅は下に枝が伸びていくので、枝の上側の芽を残して伸ばし、上から落ちていくような枝ぶりを作ってやるとよいです。
1.下に向かって伸びている枝は全て切る
2.真っ直ぐに伸びる枝を切って(下図赤線)、上に向かって伸びて
下に落ちる枝を生かす
このように切ることで、樹形内部に空間ができますし、今は上に向かっていく残った枝も次第に下にたれるように伸びていきますので、見栄えも大分変わってきます。
要はふところ(幹に近い部分)部分に空間を持たせるような枝をつくる剪定の仕方をすると良いということです。
太い枝をハサミで簡単に切る方法
おそらくですが、剪定に不慣れな方は太い枝や硬い枝を切る時に切れなくて苦労されているのではないでしょうか。
でもこれから教える方法を使うと太くて硬い枝垂れ梅の枝でもビックリするくらい簡単に切れちゃいます。
太い枝をハサミで簡単に切る方法ですが、下の図を参考にしてください。
わかりやすく描いたつもりですが、なんとなくでよいので理解してください。
はじめに「ハサミで切る位置」にハサミをセットして、枝をハサミで切ると同時に、片方の手で下に向かって枝を下げて力を与えます。
そうすると「テコの原理」で硬い枝でも簡単に切れてしまいます。場合によって、力の欠け具合によっては切れる前にスパッと折れてしまうこともあります。
力のない女性の方には重宝すると思いますし、慣れれば細い枝でもこれを必ずするようになります。ご活用ください。