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広くない庭で枝垂れ梅の枝をどのように作ったらよいか?

今回は、「庭は広くないが、これから枝をどのように作っていったらよいのか?」という栃木・T様の事例を、いただいた写真を元に、庭師歴25年の経験から剪定や手入れの方法を解説していきます。

T様は、還暦の記念に枝垂れ梅の苗木を買われたとのこと。とても素敵な記念ですね。「庭が広くないけれど、これから上手に育てたい」という思いに、しっかりお応えしていきます。最後まで読んでいただければ、限られたスペースでも枝垂れ梅を美しく育てるコツが分かります。

解決したいこと

2年前に、自分の還暦の記念にしだれ梅の苗木を買いました。
今年も綺麗に花を咲かせてくれました。
庭はそんなに広くはありません。
私が剪定できる高さで抑えたいと思います。
買ってきたままで、一度も剪定をしていません。
これから、どのように枝を作って行ったら良いのか教えてください。

というご相談内容です。次の3枚の写真を送っていただきました。

1. まず大切な考え方:「高さを決める」ことから始めましょう

具体的な剪定の話に入る前に、T様のような「広くない庭で枝垂れ梅を育てる」場合に、いちばん大切な考え方をお伝えします。結論として、まず「自分が手入れできる高さ」を決めて、それ以上大きくしないように仕立てることが大切です。

なぜ高さを決めることが大切なのでしょうか。T様は「私が剪定できる高さで抑えたい」と書かれていますが、これはとても賢い考え方です。木は放っておくと、どんどん大きくなります。大きくなりすぎると、高い場所の剪定が必要になり、三脚に登るなど危険な作業がともないます。特に60代以上の方にとって、高所での作業はケガのもとです。

たとえるなら、これは「自分の手が届く範囲に、よく使う物を置いておく」のと同じです。背伸びしたり、踏み台に乗ったりしないと届かない場所に物を置くと、毎回大変ですし、危ないですよね。木も同じで、自分が無理なく手入れできる高さに抑えておけば、これから何年も、安全に楽しく付き合っていけるのです。

T様の場合、「自分で剪定できる高さ」を最初のゴールに決める。これが、広くない庭で枝垂れ梅を上手に育てる、いちばんの出発点になります。

2. 枝垂れ梅の上部の仕立て方

それでは、いただいた写真を元に、具体的に見ていきましょう。今回、2枚の写真に手を加えてみました。どちらの写真も見ている方向は違いますが、同じところで切るように線を入れているはずです。

結論として、T様の枝垂れ梅は「これ以上真上に伸ばさず、横に広げる枝を選んで仕立てる」のがおすすめです。

まず下の図を見てください。上部の黄色い線は、将来的に「天辺(てっぺん)部分がこうなればいいなぁ」という予定の線です。ここが一番上になるので、ここから枝が垂れれば、管理もしやすく、ちょうどよいと思います。

なぜ「これ以上真上に伸ばさない」のでしょうか。広さがない庭の場合は、もうこれ以上真上には伸ばさないで、いったん横に伸ばすように枝を選んで仕立てる方がよいからです。

具体的には、今後伸びる枝の方向しだいですが、真上に伸びていきそうな「芯(しん)らしい枝」は切り、横に伸びるような枝にバトンタッチできればよいと思います。「芯」というのは、木のてっぺんでまっすぐ上に伸びようとする中心の枝のことです。これを止めて、横に広がる枝に主役を譲る、というイメージです。

たとえるなら、これは「身長を止めて、横幅でバランスを取る」ようなものです。上にばかり伸びると、ひょろっとして手入れしにくい木になります。ある高さで上を止めて、横に枝を張らせることで、こんもりとした、まとまりのある枝垂れ梅になるのです。

なお、上部については、今は様子を見て、冬の剪定で対応すればよいと思います。慌てて今すぐ切る必要はありません。

3. 枝垂れ梅の下部の仕立て方

結論として、下の部分は「細く伸びすぎた枝を半分ほど残して切り、不要な枝は付け根から切る」のがおすすめです。

今の箇所よりも下の部分を見ていきましょう。次の図の赤線は、切る位置を示しています。

なぜこのように切るのでしょうか。細くビヨーンと伸びた枝は、今後どうなるか分からないので、とりあえず半分か3分の1くらい残して切っておきます。全部切ってしまうのではなく、少し残しておくことで、その後の枝の出方を見ながら調整できるからです。

そして、見た目で樹形に関係ない、いらないような枝であれば、生え際(付け根)から切ってもよいでしょう。

ここで、初心者の方が迷いやすいポイントをお伝えします。「全部切るか、半分残すか」の判断です。コツは、「この枝、将来役に立ちそうかな?」と考えてみることです。樹形作りに使えそうな枝なら半分残して様子を見る、明らかに邪魔で使い道がなさそうな枝なら付け根から切る。こう考えると、判断しやすくなります。迷ったら、とりあえず半分残しておけば、後でいくらでも切れるので安心です。

今回いただいた写真では、このような感じで剪定しておけばよいと思います。一度にあれもこれもとやらず、ポイントをしぼって手を入れるのが、木にも優しく、失敗も少ないやり方です。

4. 狭い庭で枝垂れ梅をコンパクトに保つコツ

ここからは、元記事になかった大切な内容を加えます。T様のように「広くない庭」で枝垂れ梅を育てる場合の、コンパクトに保つコツをくわしくお伝えします。

結論として、狭い庭で枝垂れ梅を小さく保つには「高さを止める」「横幅を決める」「こまめに手を入れる」の3つがポイントです。

なぜこの3つかというと、枝垂れ梅は放っておくと上にも横にも広がるので、両方をコントロールし、しかも早め早めに手を入れることが大切だからです。順番に見ていきましょう。

1つ目は「高さを止める」ことです。先ほどお伝えした通り、自分が手入れできる高さを決めて、それ以上真上に伸ばさないようにします。てっぺんでまっすぐ上に伸びる芯の枝を止めて、横に枝を振り分けるのがコツです。

2つ目は「横幅を決める」ことです。枝垂れ梅は、放っておくと横にもどんどん広がります。「ここまで」という横幅を決めて、それを超えて伸びた枝は、冬の剪定で切り戻しましょう。庭の通路や、お隣との境界を超えないように、横の広がりも意識することが大切です。

3つ目は「こまめに手を入れる」ことです。狭い庭でコンパクトに保つには、数年放置して大きくしてから一気に切る、というやり方は向きません。木への負担も大きく、樹形も乱れるからです。それよりも、毎年少しずつ、伸びすぎた枝や不要な下向きの枝を整理する方が、ずっと楽で、きれいに保てます。髪の毛も、伸び放題にしてから一気に切るより、こまめに整える方がきれいですよね。

T様は今回が初めての剪定とのことですが、この3つを意識して、毎年少しずつ手を入れていけば、限られたスペースでも、見事な枝垂れ梅に育てられます。

剪定に使う道具も大切です。よく切れる剪定ばさみなら、切り口がきれいで木に優しく、細かい枝も思い通りに切れます。剪定バサミは、切れ味と耐久性に優れた「おの義(推奨)」のものを選べば間違いありません。

5. 枝垂れ梅の基本:上向きを残し、下向きを切る

T様は「一度も剪定をしていない」とのことなので、ここで枝垂れ梅の基本的な剪定の考え方を、しっかりお伝えしておきます。結論として、枝垂れ梅は「真下に向かう枝は切る、外側で上に向かう枝は残す」、これが大原則です。

なぜこの原則なのでしょうか。枝垂れる木は、上に向かって伸びた枝が、やがて自分の重みで自然と下に垂れてきます。だから、上向きの枝を残しておけば、一度上に伸びてから優雅に垂れ下がり、美しいカーブを描くのです。

たとえるなら、これは噴水と同じです。噴水の水は、いったん勢いよく上に上がってから、放物線を描いて美しく落ちてきますよね。枝垂れ梅の枝も、上向きの枝が一度上に伸びてから垂れるからこそ、あの優雅な姿になるのです。

逆に、最初から真下に向かって伸びている枝を残すと、ただダラリと下がるだけで、美しいカーブが生まれません。それどころか、下のほうがゴチャゴチャと重苦しくなってしまいます。だから、真下に向かう枝は切るのです。

また、幹に向かって内側に伸びる枝(内向き枝)も切ります。枝は、幹を中心に「外側へ、上へ」伸びるように仕立てると、すっきりした美しい樹形になります。

T様が今回剪定するときも、この「下向きは切る、上向きは残す」「外側へ、上へ」という基本を思い出してください。そうすれば、どの枝を切ればいいか、迷わなくなります。

6. 失敗しない!花芽と葉芽の見分け方

剪定で花を減らさないために、欠かせないのが花芽と葉芽の見分けです。結論として、この見分けさえできれば、枝垂れ梅の剪定で大きな失敗をすることはありません。

なぜなら、枝垂れ梅の花が咲かない失敗のほとんどが、知らずに花芽を切ってしまうことが原因だからです。逆に言えば、花芽を見分けて残すことさえできれば、安心して剪定ができます。

具体的な見分け方は、とても簡単です。丸くてふっくら太っているのが「花芽」、細くてとがっているのが「葉芽」です。花芽はこれから花になる赤ちゃんなので、ぷっくりしています。葉芽は葉っぱになるので、鉛筆の先のようにツンととがっています。

たとえば、ぶどうの粒のように丸くなっている芽を見つけたら、それが花芽です。指でそっと触って「丸いな」と感じたら、来年の花だと思って、絶対に切らないようにしましょう。

ここで、枝垂れ梅ならではの大切なポイントをお伝えします。枝垂れ梅は、古い枝には花がつきにくく、花後に伸びた新しい枝に花芽がつきます。ですから、花が終わってすぐの春から初夏に、伸びた枝を強く切るのは避けてください。来年の花芽がつくはずの枝を失ってしまうからです。本格的な剪定は、葉が落ちて花芽が確定した冬に行うのが正解です。T様も、来年の花を楽しむために、ぜひこの点を覚えておいてください。

7. 枝垂れ梅をコンパクトに育てるQ&A(よくある質問)

最後に、広くない庭での枝垂れ梅の育て方について、読者の方からよく寄せられる質問にお答えします。あなたの疑問もきっとこの中にあるはずです。

Q1:狭い庭ですが、枝垂れ梅は育てられますか?

はい、十分育てられます。枝垂れ梅は剪定で大きさをコントロールできるので、毎年こまめに手を入れれば、狭い庭でもコンパクトに保てます。ポイントは「自分が手入れできる高さに抑える」「横幅を決める」「毎年少しずつ整える」の3つです。大きくしすぎず、自分サイズに育てることで、長く楽しめます。

Q2:高さを抑えたいのですが、どうすればいいですか?

てっぺんでまっすぐ上に伸びる「芯の枝」を切り、横に伸びる枝にバトンタッチさせるのがコツです。真上への成長を止めて、横方向に枝を振り分けることで、それ以上高くならず、こんもりとまとまります。自分が無理なく剪定できる高さを決めて、それを超えそうな上向きの芯枝を冬に切る、と覚えておきましょう。

Q3:買ってから一度も剪定していません。いきなり切っても大丈夫ですか?

大丈夫ですが、いきなり大きく切るのは避けましょう。まずは、明らかに下向きの枝や、細くビヨーンと伸びすぎた枝を整理する程度から始めてください。伸びすぎた枝は、半分か3分の1ほど残して切り、様子を見ます。一度に完璧にしようとせず、これから毎年少しずつ理想の形に近づけていく、という気持ちで取り組んでください。

Q4:細く長く伸びた枝は、全部切ってしまっていいですか?

全部切るのではなく、半分か3分の1ほど残して切るのがおすすめです。今後どう枝が出るか分からないので、少し残して様子を見るのです。残した枝が役に立てばそのまま育て、不要だと分かれば後で付け根から切ればよいのです。迷ったら「とりあえず半分残す」と覚えておけば、失敗が少なくなります。

Q5:剪定する時期はいつがいいですか?今すぐやってもいいですか?

本格的な剪定は、葉が落ちた冬の休眠期(10月~芽吹く前)がおすすめです。花芽が見やすく、枝の形も分かりやすいからです。明らかに不要な下向きの枝などは今切ってもかまいませんが、上部の仕立てなど大きな剪定は冬まで待つのが安心です。花後すぐに伸びた枝を強く切ると、来年の花が減るので避けましょう。

Q6:横にも広がってきました。横幅はどうやって抑えればいいですか?

「ここまで」という横幅の限界を決めて、それを超えて伸びた枝を、冬の剪定で切り戻しましょう。庭の通路やお隣との境界を超えないように意識することが大切です。横に広がりすぎた枝は、付け根から切るか、適度な長さに切り戻します。毎年こまめに整えれば、決めた横幅の中にきれいに収まります。

Q7:高い枝を切るのが大変です。何かいい方法はありますか?

そもそも、自分が手入れできる高さに抑えておくのがいちばんの解決策です。高さを低く保てば、三脚に登らなくても作業できます。それでも高い枝を切る必要がある場合は、四本足の脚立ではなく、安定する三脚を使ってください。ただし、60代以上の方は高所作業は危険なので、無理せずプロに頼むのも賢い選択です。

Q8:花芽を切らないか心配です。コツはありますか?

いちばん簡単なのは「丸くふっくらが花芽、細くとがっているのが葉芽」と覚えることです。指でそっと触って「ぷっくりしているな」と感じたら花芽です。葉が落ちた冬の剪定なら、丸い花芽がはっきり見えるので見分けやすいです。それでも迷うときは「切らない」のが安全です。残す上向きの枝についた丸い芽は、特に大切にしてください。

8. まとめ:自分サイズに育てれば、長く楽しめる

この記事では、栃木のT様の事例をもとに、広くない庭で枝垂れ梅をどのように仕立てればいいかについて、詳しく解説しました。

今日お伝えしたことを、もう一度シンプルにまとめます。広くない庭では、まず「自分が手入れできる高さ」を決めること。てっぺんの芯枝を止めて、横に広げる枝にバトンタッチさせること。細く伸びすぎた枝は、半分ほど残して切り、様子を見ること。下向きの枝は切り、外側・上向きの枝を残すこと。そして、毎年こまめに手を入れて、コンパクトに保つこと。これらを守れば、限られたスペースでも、見事な枝垂れ梅を楽しめます。

T様、還暦の記念に選ばれた枝垂れ梅、本当に素敵ですね。これから毎年、剪定をしながら木の成長を見守っていく時間は、きっとかけがえのない楽しみになるはずです。大きくしすぎず、ご自分の手で世話できるサイズに育てることで、この先ずっと、無理なく付き合っていけます。

まずは今回お伝えしたように、明らかな不要枝から少しずつ整理してみてください。そして、これから毎年、少しずつ理想の形に近づけていきましょう。木は焦らず育てるものです。あなたと一緒に、ゆっくり美しくなっていきます。

良い道具は、楽しい手入れの相棒になります。剪定バサミは切れ味と耐久性に優れた「おの義(推奨)」を一本持っておけば、枝垂れ梅と長く付き合っていく心強い味方になってくれます。

T様、そしてこの記事を読んでくださったあなたの枝垂れ梅が、これからも毎年春に、優雅で美しい花を咲かせ続けることを心より願っております。

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