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捨てないで!ウメの種で作る『安眠梅枕』と簡単エコな再利用アイデア

はじめに

梅干しを食べたあと、口の中に残るあの「梅の種」。みなさんは、どうしていますか。多くの方が、何も考えずにポイッとゴミ箱へ捨ててしまっているのではないでしょうか。でも、ちょっと待ってください。じつはその種、昔の人にとっては「もったいなくて捨てられない宝物」だったのです。

日本人は昔から、ものを最後の最後まで大切に使い切る、すばらしい知恵を持っていました。梅の種もそのひとつで、おばあちゃんの家に行くと、梅干しの種をためておく専用の小さなびんがあった、という方もいらっしゃるかもしれません。種を集めて枕にしたり、お掃除に使ったり、ときには子どものおもちゃにしたり。たった一粒の種が、暮らしのあちこちで大活躍していたのです。

この記事では、そんな「梅の種の再利用」について、庭師の目線でとことんわかりやすくお伝えします。とくに人気の「安眠梅枕(あんみんうめまくら)」の作り方をていねいにご紹介しながら、お掃除・園芸・遊びなど、暮らしに役立つエコなアイデアをまるごとお届けします。

そして最後には、もうひとつ大切なお話も。じつは、こうして「種まで使い切りたくなるような、立派な梅の実」がなる木には、ある共通点があります。それが「剪定」です。

この記事を読み終えるころには、種の活用法はもちろん、「やっぱり梅の木って、最後の最後までありがたいなあ」と感じていただけるはずです。それでは、一緒に梅の種の奥深い世界へ入っていきましょう。

そもそも、なぜ梅の種は捨てずに使えるの? ~昔の人が大切にした理由~

梅の種は、ただのゴミではなく、再利用にぴったりの優れた素材です。なぜなら、梅の種はとてもかたく、丈夫で、しかも自然のいい香りや成分を持っているからです。

考えてみてください。梅の種は、あの石のようなかたさです。少しくらい乱暴にあつかっても、つぶれたり割れたりしません。このかたさと丈夫さがあるからこそ、枕の中身にしても形がくずれず、長く使えるのです。さらに、梅にはもともと、さわやかな香りや、昔から「体にいい」と言い伝えられてきた成分がふくまれています。だから、ただ捨ててしまうのは、本当にもったいないことなのです。

「もったいない」は日本の知恵

昔の日本の家には、ゴミという考え方がほとんどありませんでした。食べたあとの貝がらは道に敷き、使い古した着物は雑巾(ぞうきん)にし、かまどの灰は畑の肥料にする。すべてを最後まで使い切る暮らしだったのです。梅の種も、まさにその「もったいない精神」の代表選手でした。一粒の梅から、果肉は梅干しに、種は枕やお掃除に。一粒をまるごと使い切る。これこそ、現代の私たちが見習いたい、エコでやさしい暮らしの知恵なのです。

使う前の大事な下ごしらえ

ただし、梅の種をそのまま使うのはおすすめできません。梅干しや梅酒に使ったあとの種には、塩分や果肉、糖分などがついているからです。これをそのままにしておくと、カビが生えたり、においが出たり、虫がよってきたりします。ですから、使う前には必ず「きれいに洗って、しっかりかわかす」という下ごしらえをします。この一手間が、種を長く気持ちよく使うための、いちばん大切なポイントです。

つまり、梅の種は「かたくて丈夫で、いい香りや成分を持った優秀な素材」。きちんと下ごしらえをすれば、暮らしのあちこちで大活躍してくれるのです。

梅の種をきれいにする下ごしらえ ~カビと虫を防ぐ三つの手順~

種を再利用するいちばんの土台は、「ていねいな下ごしらえ」です。なぜなら、洗いとかわかしが足りないと、せっかく作ったものがカビたり、虫がわいたりして、台なしになってしまうからです。ここでは、失敗しないための三つの手順を、順番にお伝えします。

手順1:よく洗う

まずは、種についた果肉や塩分、糖分をきれいに洗い流します。ボウルにぬるま湯をはって種をつけ、しばらくおくと、こびりついた果肉がやわらかくなって落としやすくなります。指や古い歯ブラシで、表面のすじや溝にたまった汚れもていねいにこすり落としましょう。「もう汚れていないかな」と思っても、念のためもう一度すすぐくらいの気持ちでちょうどよいです。

手順2:煮沸(しゃふつ)して消毒する

次に、なべにお湯をわかし、洗った種を五分から十分ほど煮ます。こうすると、目に見えない菌や、表面に残った汚れがさらにきれいになり、カビや虫を防ぐことができます。梅干しの種なら、この煮沸で塩分もだいぶぬけてくれます。やけどに気をつけて、ザルにあげましょう。

手順3:しっかりかわかす

最後の、そしていちばん大事な手順が「かわかす」ことです。水分が少しでも残っていると、そこからカビが生えてしまいます。ザルに広げて、風通しのよい日かげで数日、よくかわかしてください。さらに天気のよい日に、二●三日ほど日光に当てて天日干しすると、中までしっかりかわいて安心です。種をふってみて、カラカラと軽い音がすれば、よくかわいた証拠です。

つまり、「よく洗う・煮沸する・しっかりかわかす」。このたった三つの手順をていねいにやるだけで、梅の種は安全で気持ちのよい素材に生まれ変わるのです。

メインイベント!『安眠梅枕』の作り方 ~昔ながらの夏の知恵~

梅の種の再利用でいちばん人気なのが、「安眠梅枕(あんみんうめまくら)」です。なぜなら、梅の種で作った枕は、ほどよいかたさと自然なひんやり感があり、とくに暑い季節に気持ちよく眠れると、昔から親しまれてきたからです。

考えてみてください。そば殻(がら)の枕や、ひんやりした石枕(いしまくら)を使ったことのある方なら、わかると思います。やわらかすぎる枕より、ほどよくかたい枕のほうが、首がしっかり支えられて寝心地がよい、ということがあります。梅の種の枕は、まさにそのほどよいかたさ。さらに、種のあいだに空気が通るので、夏でも頭が蒸れにくく、さらりと快適なのです。

用意するもの

用意するのは、よく下ごしらえした梅の種、枕カバーになる布袋(ぬのぶくろ)、針と糸です。布袋は、市販のそば殻枕用のカバーを使ってもいいですし、使い古した枕カバーや、しっかりした生地の布で手作りしてもかまいません。中身がもれないように、目のつまった布を選ぶのがコツです。種の量は、ふつうの枕サイズなら、だいたい一キロから二キロほど。これはかなりの数なので、毎日少しずつためていくとよいでしょう。

作り方の手順

作り方はとても簡単です。まず、布袋に下ごしらえした種を入れます。入れすぎるとパンパンでかたくなりすぎ、少なすぎると頭が沈んでしまうので、頭をのせたときにちょうどよい高さになるよう量を調整します。実際に横になって試しながら入れるのがおすすめです。ちょうどよくなったら、種がもれ出ないように、袋の口をしっかりと縫いとじます。中身を出して洗えるように、口をファスナーやひもで開け閉めできるようにしておくと、あとあと便利です。これで、世界に一つだけの安眠梅枕の完成です。

使うときのお手入れ

使ううちに、髪の油や汗で汚れてきます。ときどき中の種を取り出して、日光に当ててよく干してあげましょう。こうすると、カビや虫を防げて、いつも清潔に、そして気持ちよく使えます。種そのものはとても丈夫なので、お手入れさえすれば、何年も使い続けることができます。

つまり、安眠梅枕は「ほどよいかたさ」と「夏でも蒸れない涼しさ」が魅力の、昔ながらの夏の知恵です。捨てるはずだった種が、毎晩のぐっすり快眠を支えてくれる。これほどうれしい再利用はありませんね。

梅枕だけじゃない!暮らしに役立つ再利用アイデア ~お掃除・園芸・遊び~

梅の種の使い道は、枕だけではありません。なぜなら、梅の種が持つ「かたさ」と「丈夫さ」は、お掃除や園芸、さらには遊びの道具としても大活躍するからです。ここでは、暮らしのあちこちで使えるアイデアを、いくつかご紹介します。

アイデア1:お掃除の「みがき玉」として

口の細いびんや花びんは、中まで手やスポンジが届かず、洗いにくいものですね。そんなときに役立つのが、梅の種です。びんの中に種を数粒入れ、少量の水か洗剤を入れて、ふたをしてシャカシャカふってみてください。かたい種が中をコロコロ転がって、底や内側の汚れをこすり落としてくれます。スポンジの届かない場所が、ピカピカになりますよ。

アイデア2:植木鉢の「鉢底(はちぞこ)」として

庭仕事や鉢植えが好きな方には、こんな使い方もあります。植木鉢の底に、水はけをよくするために鉢底石(はちぞこいし)を敷くことがありますが、かたい梅の種は、この鉢底石の代わりになります。鉢の底に種を敷きつめてから土を入れると、水はけがよくなり、根が腐りにくくなります。買わなくても、家にあるもので代用できるのはうれしいですね。

アイデア3:使い捨てカイロや消臭剤(しょうしゅうざい)の中身に

よくかわかした梅の種を、小さな布袋に入れて、げた箱やクローゼットに置いておくと、ほんのりとした自然な香りと、湿気とりの役目をしてくれます。種には小さな空気のすき間がたくさんあるので、湿気を吸ってくれるのです。香りが弱くなってきたら、また日光に当てれば、くりかえし使えます。

アイデア4:昔ながらの遊び道具に

お孫さんがいるご家庭なら、梅の種は楽しい遊び道具にもなります。昔は「梅の種飛ばし」といって、口に種をふくんでどこまで遠くへ飛ばせるかを競う遊びがありました。今でも各地で「梅の種飛ばし大会」が開かれているほどです。また、おはじきのように指ではじいて遊んだり、小さな入れものに何個入るか数えたりと、自然の素材ならではの素朴な遊びが楽しめます。

アイデア5:土にかえす(コンポスト)

「やっぱり何にも使わない」という分も、ただ捨てるのではなく、土にかえすという方法があります。生ゴミといっしょに堆肥(たいひ)にすれば、やがて分解され、畑や庭の栄養になります。種はかたいので分解には時間がかかりますが、最後は自然の一部にもどっていく。これも立派なエコの形です。

つまり、梅の種は「お掃除・園芸・消臭・遊び・堆肥」と、暮らしのあらゆる場面で活躍してくれます。アイデアしだいで、捨てるところがまったくない、すばらしい素材なのです。

知っておきたい注意点 ~安全に楽しむために~

梅の種を楽しく使うために、いくつか気をつけたいことがあります。なぜなら、使い方をまちがえると、思わぬトラブルにつながることがあるからです。ここで、安全に長く楽しむためのポイントをお伝えします。

食べたり、中身を割ったりしない

梅の種の中には「仁(じん)」と呼ばれる、やわらかい部分があります。昔から「天神(てんじん)さま」などと呼ばれ、食べる地域もありますが、未熟な梅の仁には体によくない成分がふくまれていることがあります。とくにお子さんやお孫さんが、興味本位で種を割って中を食べたりしないよう、注意してあげてください。再利用するときは、あくまで「種そのもの」を道具として使う、と覚えておきましょう。

かわかしが不十分だとカビる

くりかえしになりますが、いちばんの失敗のもとは「かわかし不足」です。枕やふくろものは、湿気がこもるとカビや虫の温床になります。作るときも、使っているあいだも、こまめに天日干しをして、しっかりかわかすことを忘れないでください。

誤飲(ごいん)に注意

梅の種は、小さなお子さんが口に入れてしまうと、のどにつまる危険があります。お孫さんのいるご家庭では、遊びに使うときも、必ず大人が見ているところで使い、使い終わったら手の届かない場所に片づけるようにしましょう。

つまり、「中身は食べない・しっかりかわかす・誤飲に注意」。この三つを守れば、梅の種を安全に、そして気持ちよく楽しむことができます。

【プロの視点】立派な種がたくさん採れるのは、じつは剪定のおかげ

ここからが、梅の専門サイトだからこそお伝えしたい、いちばん大切なお話です。じつは、「枕にできるほどたくさんの、しっかりした種が採れる」のは、もとをたどれば「剪定(せんてい)」のおかげなのです。なぜなら、種は実の中にあるものですから、まずは大きくて立派な実がたくさんならなければ、種も集まらないからです。

考えてみてください。梅枕を作るには、種が一キロも二キロも必要です。これだけの数を集めるには、毎年たくさんの梅が、しっかりと実をつけてくれなければなりません。ところが、枝が伸び放題でうっそうとした木は、葉が日光をさえぎり合い、花も実もまばらにしかつきません。実が少なければ、当然、種も集まらないのです。

夏の剪定が、実の数と充実度を決める

たくさんの立派な実をならせるカギが「夏の剪定」です。夏に余分な枝(徒長枝=とちょうし、勢いよくまっすぐ伸びる枝)を整理しておくと、木の栄養が実のほうへしっかり集まり、翌年の実がぐんと大きく、数も多く充実します。実が大きく立派になれば、その中の種もまた、しっかりとした使いごたえのあるものになります。「うちの梅は実が少なくて、種なんて集まらない」という方は、夏の剪定を見直すと、おどろくほど実つきがよくなることがあります。当サイトの夏の剪定の記事も、ぜひあわせてお読みください。

冬の剪定が、毎年の実りを支える

そして、葉が落ちた冬の剪定では、木の骨組みを整え、花つき・実つきのよい元気な木に仕立てます。「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」という昔の言葉のとおり、梅はしっかり切ってあげることで、かえって元気になり、毎年たくさんの花を咲かせ、実をならせてくれます。つまり、来年もまた種を集めて再利用を楽しむためには、冬のうちのお手入れが欠かせないのです。

つまり、「捨てずに使い切りたくなるほど立派な実」の出発点は、台所でも作業台でもなく「庭の木の剪定」にあります。種の活用を楽しんでいる今こそ、その種を生んでくれた木のことにも、ぜひ目を向けてみてください。剪定という土台があってこそ、梅は果肉から種まで、最後の最後まで私たちを楽しませてくれるのです。

読者からよくある質問(Q&A)

Q1. 梅酒に使ったあとの種でも、枕は作れますか?

A. はい、作れます。ただし、梅酒の種は糖分やお酒がしみこんでいるので、梅干しの種よりもさらにていねいに、よく洗って煮沸し、しっかりかわかしてください。下ごしらえさえきちんとすれば、梅干しの種と同じように使えます。

Q2. 種が少ししか集まりません。早く枕を作る方法は?

A. 枕一つには一●二キロもの種が必要なので、毎日の梅干しだけではなかなか集まりません。コツは、あせらず少しずつためること。きれいに下ごしらえした種を、清潔なびんに入れて保存しておけば、何ヶ月かけてでも安心してためられます。また、梅仕事をたくさんする年に、まとめて種を確保しておくのもよい方法です。

Q3. 梅の種に虫がわいてしまいました。どうすれば?

A. 多くの場合、かわかしが不十分だったことが原因です。虫がついた種は、もう一度よく洗って煮沸し、しっかり天日干しをしてください。それでも気になる場合は、無理せず処分し、新しい種で作り直すのが安心です。ふだんから、こまめな天日干しが虫よけになります。

Q4. 梅枕は、どれくらい長く使えますか?

A. 梅の種はとても丈夫なので、お手入れしだいで何年も使えます。ときどき中身を取り出して天日干しし、汚れたら布カバーを洗うようにすれば、清潔なまま長く愛用できます。中身がへたってきたら、新しい種を足してあげましょう。

Q5. 梅枕は本当によく眠れるのですか?

A. 感じ方には個人差がありますが、ほどよいかたさで首を支えてくれることや、空気が通って夏でも蒸れにくいことから、「気持ちよく眠れる」という方が多いです。やわらかい枕が苦手な方や、夏の寝苦しさに悩む方は、一度ためしてみる価値があります。

Q6. 種を割って中の「仁」を食べてもいいですか?

A. おすすめしません。「天神さま」と呼んで食べる地域もありますが、とくに未熟な梅の仁には体によくない成分がふくまれることがあります。安全のため、再利用するときは種そのものを道具として使い、中身は食べないようにしましょう。

Q7. お掃除に使った種は、また別のことに使えますか?

A. はい、よく洗ってかわかせば、くりかえし使えます。お掃除に使ったあと、消臭剤として置いたり、最後は土にかえしたりと、一粒の種を何役にも使えるのが梅の種のすばらしいところです。

Q8. たくさんの種を、当面どう保存しておけばいいですか?

A. いちばん大切なのは「完全にかわかしてから保存する」ことです。よく下ごしらえして、カラカラになるまでかわかした種を、ふたつきの清潔なびんや保存袋に入れ、湿気の少ない場所に置いておきましょう。ときどき様子を見て、湿っていないか確認すると安心です。

Q9. 梅の種を庭にまいたら、芽が出て木になりますか?

A. 梅干しや梅酒に使った種は、加工の過程で発芽する力を失っていることがほとんどなので、まいてもまず芽は出ません。木を育てたい場合は、生の梅の種を使ったり、苗木(なえぎ)を買ったりするのが確実です。

Q10. 梅の種飛ばし大会って、本当にあるのですか?

A. はい、本当にあります。梅の産地などでは、種を口から飛ばして距離を競う楽しいイベントが開かれています。お孫さんと、お庭で安全に楽しむミニ大会を開いてみるのも、家族の素敵な思い出になりますよ。

梅は、花で目を楽しませ、実で食卓をうるおし、そして種にいたるまで、最後の最後まで私たちの暮らしに寄りそってくれる、本当にありがたい木です。捨てるはずだった一粒の種が、毎晩の快眠を支え、お掃除を助け、家族の笑顔を生む。そんな豊かな再利用ができるのも、毎年しっかり実をならせてくれる木があってこそ。その木を元気に保つのが、日ごろの剪定です。今年も種まで使い切って、梅をまるごと楽しんでくださいね。やっぱり、梅の木って最高です。

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